オンナノコになりたいなぁとふと思う。
くすんだ空。ちぎれた雲。灰色の道。
そんな世界でもただオンナノコは綺麗で可愛くて、愛らしい。
いつもいつも街を歩くたび、オンナノコになれたらどれだけ楽しくて気持ちのいい毎日を過ごせるんだろう、と想いを馳せる。
それだけオンナノコは、何よりもキタナイこの世界で、誰よりも輝いて見える。
ひらひらのスカートも、さらさらになびく髪も、きらきらのお化粧も、全部、ぜんぶ。何もかもが、ぴかぴかしてる。
そうっとため息をつきながら、ちょっとだけフェミニンなジャケットの襟を直してみる。きっとオンナノコになるにはまだまだ遠くて、でも一生届かなくて、だからこそ憧れて、憧れて、何よりも眩しい。
オンナノコになれない、女の子が、きっと一番くすんでいて泣きそうな存在。
でも自分はこうやって生きていくしか道はないのだなと、可愛いオンナノコを見て目を癒しながら、毎日をしたたかに過ごしていく。自分はいつだってオンナノコの味方なのだとほくそ笑むだけが、楽しいのだ。